まず初めに、日本でも年間数えられるくらいのケースしか行われないこの処置を行わせていただき、また、ブログ上で公開することに了承いただいた患者様に深い感謝を申し上げます。また、ご協力いただいた先生、作成いただいた技工士さんを始め、支えて下さった多くの方々に感謝を申し上げます。
これを語るには、まずAGCブリッジはなにか?から話さなければなりません。
AGCというのは「Auro Galvano Crown」の略で、Auroは「金」、Galvanoは「直流の」、Crownは「冠」。電極に電気を流して、金を蓄積させた冠を作ります。
コーヌスクローネという、内冠に外冠をはめ込むだけで使用できる「義歯」があります。その応用になります。
Teleskopprothes_Unterkiefer_fünf_Teleskope_20091228_002.JPG (4272×2848) (wikimedia.org) Teleskopprothes_Unterkiefer_fünf_Teleskope_20091228_007.JPG (4272×2848) (wikimedia.org) Teleskopprothes Unterkiefer fünf Teleskope 20091228 006 – コーヌスクローネ – WikipediaコーヌスクローネのWikipediaより
コーヌスクローネは、上のように歯に被せものをしたものを延長した部分に、義歯が作られています。わかりづらいですが、支えとなる前歯の奥に、歯が作られているのが見えるでしょうか?特徴としては、歯の部分に沈みこむ力を負担させるので、通常の義歯より噛んだ時の違和感がでづらい、という事です。また、接着剤を使わずくっつけるので、何かあった時にすぐに外せる、という特徴もあります。
AGCブリッジは、このコーヌスクローネの支えとなる歯の部分がインプラントとなったものです。
義歯の場合、狙ったところに歯が残ることはほとんどありません。今ある状態に対して、どう治療していくのか?という部分が、いつも一番の難関になります。
一方、AGCブリッジは、インプラントの上にブリッジを作ります。
Zahnbrücke 052 – ブリッジ (歯科) – Wikipedia
ブリッジは、上の通り、支えとなる「歯」のみに負担をさせます。粘膜を覆う事は特殊な場合を除き、ほとんどありません。先ほど話に出たコーヌスクローネは「義歯」です。遊離端(ゆうりたん)という言葉を調べていただきたいのですが、義歯は遊離端となるケースが多いです。作ったものが、支えなく浮いている状態の部分、とも言い換えることができます。前後の支えがない部分で噛むと、その部分(遊離端)が壊れる力が強くかかったり、支えとなる歯がひねられる力がかかります。コーヌスクローネは優秀な義歯ですが、長持ちしないことがあります。理由はここにあります。
インプラントを用いたAGCブリッジでは、設計にかなりの自由がききます。ですので、一番奥のかむ部分の真下にインプラントがくるように設計することができます。ですので、遊離端とならず、口の中全体を覆うようなものなのにブリッジとして作ることができます。(ただし、一部の骨が著しく減ると、その空間に食べ物が容易につまるため、義歯のように覆う形を作ることはあります。)
前置きはこのくらいにして、どういう治療を行ったのか見ていきましょう
歯周病が進行し、ぐらぐらの歯を、材料で無理やりくっつけられている状態でした。この処置は古くから行われていますが、結局、材料の下で炎症が強まり、徐々に膿が出る状態になり、骨はますますなくなり・・・という悪循環に陥ります。(歯ブラシは届かず、細菌はたまる一方だからです)
全体では、あまりの骨が減っているように見えないのですが・・・
CTで見ると、かなり骨のない状態でした。無理やり残せる歯はありますが、それで安定したかみ合わせを作れるか、というと難しいところがあります。何より、これまでご自身の歯で噛んできたところに、一気にすべての歯をなくして「入れ歯」というのには抵抗がありました。
話し合いの結果、上で説明をしたインプラントAGCブリッジで処置することとなりました。
このブリッジにするには、基本的に全体的に問題があるケースになります。すべての歯を抜かなければなりません。健康状態に問題がある人(重度糖尿病、抜歯時に血が止まらない等)、チタンアレルギーのある人はできません。
しかし、メリットとしては、「歯のように噛める」「接着剤を使っていないので、仮に施設に入院状態になっても、ある器具があれば、取り外してクリーニングできる」「義歯状態に移行することも可能」ということです。
処置に入りました。まずはシミュレーションを行い、インプラントを入れる部位を決めます。そこに取り付ける仮の歯を作成しておきます。
その後、歯を抜いてインプラントを入れます。本命のインプラントは、入れた後強くなるまで時間が必要なため、仮のインプラントも入れます。そこに仮歯を合わせます。
この状態で、かみ合わせが不十分のため、材料を盛ったり、削ったりして、かみ合わせを作りました。
さすがに失敗の許されない処置なので、インプラントを入れる部分は、日本でもトップレベルの先生をお呼びしております。(私自身入れることも可能ですが、生涯一度あるかないかのケースなので、慎重を期してお呼びして行うこととしました。)
抜歯、インプラントを入れる手術、全体の仮歯調整まで含めて4時間程度で終わっています。(抜歯30分、インプラントを入れて縫うまでは90分でした。さすがの凄腕の先生です)
6本の本命のインプラントのうち、状態がかなり良かった2本にも負荷をかける形にして、手術は終わりました(これが後の問題につながりました)
一月後、本命のインプラントが1本、さらに1か月後、もう一本のインプラントがぐらついてきたのです。これらを撤去し、再度インプラントを入れました。(即時荷重という方法がありますが、実は強い負荷はかけられません。インプラント基本的に入れてから1か月は弱くなります。その後1か月、計2か月かけて強くなります。)今回は、歯と同じように仮歯を使ったため起こったアクシデントでした。
その後、強くなった本命インプラントを使った仮歯に変更しました。
上が新しく作ったもの、下がこれまでのもの、になります。歯ぐきとの間に空間が広がっていたので、歯ぐきの部分を補うような形で作られています。
ここからかみ合わせ等を確認し、安定したのを確認したのち、最終的なブリッジを作っていきました。
上のアルファベットが書いてあるところが、金で作られたキャップ(内冠)です。そこにブリッジをはめ込みます。
このような形にはまりました。上からすべての流れをみていると、境目がわかったりするので作り物と気づけますが、実生活では気づけないのではないでしょうか?
この方法を用いることで、上全体の治療ですが、インプラントの必要本数を減らすことができています。1か所1本入れると12ないし14本のインプラントを入れるケースを見ますが、果たして必要なのでしょうか?
見た目、「噛む」という機能、その後のトラブルへの対応など、様々な方面から考えると、AGCブリッジは人生の終末を見越したうえでの、ひとつの回答になると思っています。
今回は、インプラントのトラブルがあったため、治療期間は1年を要しました。それがなければ、半年程度で終わったのではないかと思います。
治療に関する費用は、goldが使われるため時価ではありますが、この時には400~500万円がかかっております。処置を終えてからはノントラブルであり、現段階では良好です。
インプラント治療について大まかにまとめたページがございますので、ご参照くださいhttps://meguridental.com/treatment/implant/
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