診療に対する姿勢

市川、妙典の歯科医院、めぐりデンタルクリニックの梶原です。

当院は、歯科医院であります。歯科医院の本来の存在意義は、①困った人を何とかして困らない状態にするところ、という事が言えると思います。問題なのが、この「困った人」の定義。何となく気になる、数日痛みがある=困った、と考える人が多い、という事です。

我々の考える「困った人」とは、「日常生活が送れないレベルである」あるいは「事故などで急激な痛み、歯が割れたり変な位置に移動するなどの急激な変化・異常がある状態」と言えると思います。そういう意味で、来院頂く方の9割はこれには当てはまりません。

では、残りの9割の方はどこにあてはまるのか?それは②将来に起こる問題・リスクを減らす、という目的のためにいらしていただいているという事になります。

ここで重要なのが、ただ通うだけでは、リスクは減らすことはできない、という事です。リスクがある所をお伝えすることはできます。今現在はどういう状態とお伝えすることもできます。しかし、かなり難しい状態であるにもかかわらず、症状がないので何もしたくない、という方には、我々は何もできることはありません。

例えるならば、川を渡るための橋があるとします。こちらは現場作業員で、橋の状態が大丈夫か定期的に見ているとします。亀裂が見つかりました。今は問題ありませんが、それなりの大きさの亀裂です。それを報告します。しかし、責任者は「今、人が問題なく渡れているから大丈夫」と判断しました。現場作業員は何かできることはあるでしょうか?

我々の立場としては、上の例の現場作業員のようなものです。どこまでいっても、その人の口の中の責任・決定権はその人自身です。上の例で、橋が壊れた時に「ずっと見てたはずなのに何をやってたんだ!」と言われることがあります。しかし、その前に何かしらの提案はあったはずです。それが長い時がたち、提案されたこと自体を忘れるとずっと問題ない、と思ってしまう。そして、時間がたってから問題を起こす。私のこれまでの経験で何度か出くわした経験です。

また、最初は手を打てたものが、長い時間を経過すると手が打てなくなることがあります。正直、どの人が時間がたっても手を打てる人で、どの人が打てない人なのかを100%選別することはできません。特に、問題が起こりそうな口の中をしている人がそのままでいけるかを保証することなどできません。だから、我々は早期の提案をするのです。

究極、歯がすべてなくなれば、その方が手を打ちやすかったりもします。しかし、現代においては数本の歯がなくなり他の歯が無事で、「さあ、どうしましょう?」というケースがほとんど。実はこのようなケースが一番難しいのです。

何も処置せずに、一生をご自身の歯のままで終える。それは理想だと思います。私たちもむやみに介入したいわけではありません。何も触らずに済むのであれば、それが一番です。

しかし、触らずに済むかもしれない人、触らない結果厄介な状態になる人の見極めは中々に困難。そのような事情から、お一人お一人に先んじてベストな提案をさせていただいております。ご理解がいただけますと幸いです。