2021.12.09
歯科の分野でも新しいことが発見されています
市川、妙典の歯科医院、めぐりデンタルクリニックの梶原です。
大きな変化がほとんど起こらなくなってきた歯科医療の分野。これから先に大きな変化があるとすれば、iPS細胞をいかに増殖・分化・制御して、歯そのものを作るか。あるいは、失われた部分にiPS細胞を変化させるか。この辺りになることでしょう。
しかし、現在においても新しい発見はあります。MRONJという言葉があります。もとはBRONJといい、骨粗鬆症の方がBP製剤という薬を服用していた場合、抜歯をすると顎骨壊死が起こると言われていました。
魔法のような言葉なので、かみくだいて説明します。
骨粗鬆症の特定の薬を使っている人が歯を抜いた時、抜いた周囲も含めて、顎の骨が壊死するという現象が起きることが発見されました。2003年のことになります。骨粗鬆症の方は、何かあるたびに「整形外科の先生に手紙を渡してください」と言われて記憶があるのではないでしょうか?
今回は、上記の報告と180方向が異なる内容が論文として出されたという話題です。
日本で顎骨壊死の研究をしているところはいくつかありますが、長崎大学はその先鋒といってよいでしょう。私の大学のとりわけ優秀なOBの先生がその講座に所属しています。今回の発表はその先生ではないですが、感染源となる歯は抜いたほうが、顎が壊死することを防げるという結果がでた、という話です。ちなみに、これまでは壊死を起こすため安易な抜歯は禁忌だと言われていました。
私がそのOBの先生の講演を聞いた際には、壊死を起こした部分をどの範囲で取り除くのか、という内容の話でした。つい5年ほど前だったと思います。それだけに、今回の発表は驚いております。ただ、数年前のドイツの報告では、きちんとした管理をされている患者であれば、MRONJの発症率は高くない、というものがあり、今回の発表はその流れに沿っていると感じています。
アメリカの口腔外科医の報告から始まった、世界を巻き込んだ一連の大事件だったわけですが、もし今回の長崎大学の発表が終止符を打つものになるのなら、これはすごいことです。
生活を一変させるような大きな発見ではないですが、このような小さな発見は今も歯科の分野では続いています。そういうものの延長が日々の診療に続いています。研究をして下さる方々に感謝をし、また明日から診療に取り組んでいこうと思います。